ナチス・ホロコーストを描いた隠れた名作映画ランキング

8位 「コロニア」(2016年)

コロニア [DVD]

主演はエマ・ワトソン。共演はミカエル・ニクヴィスト、ダニエル・ブリュールなど。ヒトラー政権下でナチスの軍曹として活動し、戦後の混乱期に行方をくらましたパウル・シェーファーが1961年に南米チリに設立したドイツ系移民コミュニティー「コロニア・ディグニダ」。シェーファーは経済力で周囲の住民の信頼を得る一方、ピノチェト政権下で秘密警察の拷問センター、大量武器庫、武器密輸の基地という裏の顔を持っていました。そこでは、ナチスの拷問手法が継承されており、完全秘密主義で脱出不可能な敷地の中で、300人ほどのドイツ人やチリ人が管理され、暮らしており、40年間の間に脱出できたのはたった5人と言われています。本作は、そのたった5人の脱出者の一人の少年の実話がモチーフになっており、チリのクーデターに巻き込まれコロニアに囚われてしまったカメラマンのダニエル(ダニエル・ブリュール)と彼を救い出そうとコロニアに潜入する恋人のレナ(エマ・ワトソン)の緊迫の脱出劇です。二人はコロニアを脱出し、国外へ逃亡しようとするのですが、ドイツ大使館や空港にまでナチス残党の手先がおり、実際は国外に逃げても追っ手が来るということもあったそうです。コロニアは1997年に警察が踏み込むまで続いており、シェーファーが逮捕されたのは2005年とごく最近。戦争を経験していない世代にとっては、ナチス残党がチリで巨大ファームを築き、政府とも癒着しているなんて、映画「アイアン・スカイ」の「ナチス残党が月から攻めてきた」と同じくらい現実味のない出来事で、もしかしたら一見クリーンな国に見えても、世界中にナチス残党が潜んでおり、とんでもないものを隠しているのでは?と自分の目で見るまで何も信じられなくなる作品です。ラブストーリーやハラハラドキドキの逃亡劇としても良く出来ているので、オススメです。

タイトル:「コロニア」
2016年9月17日(土)ヒューマントラストシネマ渋谷ほかにて全国ロードショー
配給:REGENTS=日活
公式サイト: http://colonia.jp/

9位 「帰ってきたヒトラー」(2016年)

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主演はオリヴァー・マスッチ。もし、ヒトラーがタイムスリップをし現代に現れたら?不謹慎なコスプレ男?顔が似たモノマネ芸人?リストラされたテレビマンに発掘され、彼の復帰の足がかりにテレビ出演させられた正体不明の男は、とんでもない演説を繰り返し、視聴者の度肝を抜きます。自信たっぷりの演説は、完成度の高い芸とみなされ、過激な毒演は、ユーモラスで真理をついていると話題になり、大衆の心を掴み始めます。しかし、皆は気付いていませんでした。彼がタイムスリップしてきた本物のアドルフ・ヒトラー(オリヴァー・マスッチ)で、70年前と全く変わっていないことに。ドイツで250万部を売り上げ、世界42カ国で翻訳された超問題作がまさかの実写化!

帰ってきたヒトラー 上下合本版 (河出文庫)

ヒトラーの“演説の天才”の側面にスポットをあてており、もしかして、ヒトラーは大量殺戮や侵略行為をしていなかったならば、有能な政治家で今でも賛美されていたのでは?と思い込まされてしまいそうな演説力と、彼の人としてのバイタリティー溢れる一挙一動に、マジックにかかったようにラストまで引き込まれます。現代や未来に、ヒトラーのように人々の心に火をつけるのが抜群に上手い人物が現れたら、正義の名において歴史が繰り返されてしまうのではないか?すでに、それは始まっているのでは?とヒトラーのコミカルさに笑いながらも真剣に恐ろしさを感じる作品です。SNS社会となった現代ではますます、言葉が世界を壊すほどの力を持っていることを改めて突き付けられるブラックでシニカルでユーモラスな警鐘コメディー。

タイトル:「帰ってきたヒトラー」
2016年6月17日(金)TOHOシネマズ シャンテほかにて全国ロードショー
配給:ギャガ
公式サイト: http://gaga.ne.jp/hitlerisback/

10位 「ブルーム・オブ・イエスタデイ」(2017年)

Die Blumen von gestern

主演はラース・アイディンガー。共演はアデル・エネルなど。ナチス・ドイツの戦犯を祖父に持ち、ホロコーストの研究に人生を捧げる男性トト(ラース・アイディンガー)とナチスの犠牲者を祖母に持ち、祖母の無念を晴らすため、ホロコーストの研究に青春を捧げるインターンの女性ザジ(アデル・エネル)。出発点は正反対の二人ですが、ともに“アウシュビッツ会議”の講演会を成功させるために、奔走することに。生真面目で一族の罪を償うためにホロコーストと向き合うトトは、ホロコーストの歴史を茶化し、ドイツ人とばかり付き合い、性に奔放なザジに最初は反感を覚えますが、二人のルーツを探す旅の中で、二人は自らの過去と向き合い、その呪縛から解放され成長していきます。

Die Blumen Von Gestern

本作のメガホンを撮ったクリス・クラウス監督の祖父や親族がナチスに関わりがあったことから作られた作品。ドイツでは、ホロコーストと性とキリスト教が密接に絡み合っており、性を解放し過ぎたからホロコーストが起きたという考え方があります。そして戦後、保守的な性の道徳観を人々に植え付けることで、ホロコーストを性の問題にすり替え、人々がナチズムを支持したという事実と向き合わないように、すべてを曖昧にしてきました。本作はそういったドイツ人の歴史に真正面から勝負を挑んでいる作品で、劇中、性に対しあけすけな台詞が多く登場します。ホロコーストをブラックユーモアとラブストーリーとして描くことで、過去を抱えながら現代に生きる若者をリアルに映し出しています。愛と笑いと勇気でタブーの扉を開け、ナチス・ドイツ映画の歴史が変わるエポック・メイキングな物語。ドイツ映画賞で7部門ノミネートし、第29回東京国際映画祭でグランプリを獲得し、皆に支持された、未来を見つける作品です。

タイトル:「ブルーム・オブ・イエスタデイ」
2017年9月30日(土)ル・シネマほかにて全国ロードショー
配給:キノフィルムズ
公式サイト: http://bloom-of-yesterday.com/

いかがでしたか?
過去に起こったホロコーストそのものを描いた作品だけでなく、様々な観点からホロコーストと向き合い、過去から現在、未来に繋がる映画をピックアップしました。視野が広がる作品ばかりなので、ぜひ参考にしてみてください。

(文 / Yuri.O)