ナチス・ホロコーストを描いた隠れた名作映画ランキング

5位 「縞模様のパジャマの少年」(2009年)

 

縞模様のパジャマの少年 [DVD]

主演はエイサ・バターフィールド。共演はジャック・スキャロンなど。第二次世界大戦下のドイツ。ナチス将校の父の昇進で片田舎に引っ越してきた8歳のブルーノ(エイサ・バターフィールド)。学校も遊ぶところでさえない退屈な日常に耐えかねたブルーノは、母から立ち入りを禁止されていた裏庭から森の奥へ探検に出ることに。森の奥を進むと簡素なフェンスとその向こう側にいる同じ歳の縞模様のパジャマを着た少年シュムール(ジャック・スキャロン)と出会います。シュムールはなぜパジャマを着せられているのか、フェンスの向こう側に閉じ込められているのか理解しておらず、ブルーノもまた知りませんでしたが、その日から二人は大人たちに隠れて友情を築きだします。その友情が、やがてブルーノの運命を変えてしまうとも知らずに・・・。映画「リトル・ヴォイス」の名匠マーク・ハーマンとディズニーが贈る、ホロコーストを新しい視点で描いた珠玉のヒューマン・ドラマ。

本作で描かれているブルーノ一家は裕福で常にドイツ兵が出入りしていますが、父以外の家族は強制収容所の存在もそこで何が行なわれているかも知りません。中盤、それが明らかになり、母は子どもたちを連れて家を出ようとしますが、史実でも強制収容所で働くドイツ将校たちの家族は何が行なわれているのか知らなかったという事例があったそうです。ドイツ兵たちの苦しみや罪悪感も描かれており、「ではなぜ誰も反対しなかったのか?」とハーマン監督に問われているかのような構成になっています。物語はブルーノ目線で残虐なシーンもないので、ディズニー制作ですが、ブルーノと同じ年頃の子どもには難解な作品かも知れません。戦争をしている大人たちが悪いのか?見たくないものは見ようとしない大人たちが悪いのか?右向け右を強制した国が悪いのか?ホロコーストで人を殺すのと、前線で人を殺すのでは何が違うのか?を悲劇として言いようのない結末から考えさせられる深い余韻が残る物語です。

タイトル:「縞模様のパジャマの少年」
2009年8月8日(土)恵比寿ガーデンシネマほかにて全国ロードショー
配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン

6位 「否定と肯定」(2017年

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否定と肯定 ホロコーストの真実をめぐる闘い (ハーパーBOOKS)

主演はレイチェル・ワイズ。共演はティモシー・スポールなど。ユダヤ人歴史学者のデボラ・E・リップシュタット(レイチェル・ワイズ)とイギリスの歴史でホロコースト否定論者のデヴィッド・アーヴィング(ティモシー・スポール)との「ナチスによる大量虐殺は真実か?虚構か?」を争った前代未聞の法廷劇。「アーヴィング対ペンギンブックス・リップシュタット事件」として知られているこの裁判は、リップシュタットが自身の著書でアーヴィングを否定し、そのことがアーヴィングの怒りを買い、名誉棄損で訴えられる形で始まります。「ヒトラーはホロコーストに対し消極的であり、収容所のガス室で処刑されたという事実はなかった。」というアーヴィングの訴えに、まさかのリップシュタット側が負けそうになるのですが、そこにはイギリス司法制度のからくりがあり、ホロコーストものとしても裁判ものとしても興味深いです。注目すべきは、これが2000年というごく最近に行われた裁判だということ。アーヴィングは自身の著書がヨーロッパで大ヒットを叩き出し、歴史家としても有名な人物で、世界中に彼を支持するネオナチ、反ユダヤ主義者、人種排他主義者が現代にも多く存在し、この裁判は世界中のマスコミが注目する大裁判となりました。本作のために来日したリップシュタット氏は「“嘘”や“見解”が「事実」に捻じ曲げられていくプロセス」について語っており、それは現代のSNS社会や世界情勢に通じるところがあり、人間一人一人がきちんと考え、情報を精査・選択していかなければ、同じ悲劇を繰り返すことになると警鐘を鳴らす作品となっています。

タイトル:「否定と肯定」
2017年12月8日(金)TOHOシネマズ シャンテほかにて全国ロードショー
配給:ツイン
公式サイト: http://hitei-koutei.com/

7位 「杉原千畝 スギハラチウネ」(2015年)

杉原千畝 スギハラチウネ DVD通常版

主演は唐沢寿明。共演は小雪、ボリス・シッツなど。オスカー・シンドラーと並び、ヨーロッパでは知らない人はいない「東洋のシンドラー」こと杉原千畝(すぎはらちうね)。多くのユダヤ人難民を救った人物として有名ですが、稀代の諜報外交官であったことは、あまり知られていません。杉原は、堪能な語学力と豊富な知識、人脈を駆使し、世界各国の諜報活動に携わり、混乱下の第二次世界大戦前後の世界情勢をいち早く分析し、自らの身の危険を顧みず、日本に情報を発信し続けていました。その一方で、日本政府に背き、ユダヤ難民に独断でビザを発行し、6000人にものぼるユダヤ人を救った杉原。外交官としての杉原の信念、ユダヤ人にビザを発行し続けた心情とは?ハリウッド作品にも多く参加している映画監督チェリン・グラックが贈る、これまで描かれることのなかった杉原千畝の真実の物語。

杉原千畝(すぎはらちうね) (PHP文庫)

本作のメガホンを撮ったのは、映画「トランスフォーマー」「ブラック・レイン」などで助監督を務め、映画「サイドウェイズ」で監督デビューを果たした日本生まれの映画監督チェリン・グラック。唐沢がグラックのファンだったことから企画がスタートし、ハリウッドの撮影チームとタッグを組み、映画「シンドラーのリスト」のロケ地でもあり、アウシュビッツ強制収容所があるポーランドでオールロケを行いました。そのため、杉原の功績の讃え方など、髄所に洋画寄りな構成が観られます。また、モントリオール国政映画祭にて最優秀男優賞を受賞したボリス・シッツが杉原の右腕であるペシュ役を、“ポーランドの至宝”と呼ばれるポーランドの国民的女優のアグネシュカ・グロホフスカが杉原の同僚役を演じ、国際色豊かな作品となりました。杉原は独自の諜報網を生かし、国家の反逆者にならないギリギリのラインを見極め、行動しており、その中で生まれる人と人との絆が、とてもドラマティックに描かれています。杉原の生き方を通して、周囲が全員右を向いている時に、左を向くことができるか?自分で自分を恥じない生き方、後悔しない選択をできるのかを問われる、日本人なら知っておきたい作品です。

タイトル:「杉原千畝 スギハラチウネ」
2015年12月5日(土)TOHOシネマズ 日劇ほかにて全国ロードショー
配給:東宝
公式サイト:
https://www.toho.co.jp/movie/lineup/sugihara.html