同じ難病を扱った映画「8年越しの花嫁」と「彼女が目覚めるその日まで」の見どころ比較!

2018年1月18日

2017年12月16日に、映画「8年越しの花嫁 奇跡の実話」と映画「彼女が目覚めるその日まで」がそれぞれ公開しました。どちらの作品も、難病指定されている「抗NMDA受容体脳炎」という病気と戦う患者とその家族の闘病の日々を描いた作品です。偶然にも同じ日付に公開される2作品ですが、ハリウッドと日本作品ということもあり、作品へのアプローチの仕方がかなり違います。
そこで今回は、映画「8年越しの花嫁 奇跡の実話」と「彼女が目覚めるその日まで」を比較しながら、見どころを考察していきます。

「抗NMDA受容体脳炎」とは?

脳に棲む魔物

2007年に「抗NMDA受容体脳炎」という病名がつき、難病指定された病気。脳の興奮性神経伝達を行うNMDA受容体に自己抗体ができてしまい誤って自身の脳を攻撃してしまう病気で、ある日突然意識がなくなり、身体が何かにとり憑かれたように痙攣し、奇妙な動きをすることが特徴として現れます。意識障害も起き、幻覚や幻聴に悩まされ、自分で思ってもみないことを口走ってしまうことも。今では、映画「エクソシスト」のリーガンのモデルとなった少年や、これまで悪魔祓いをされてきた患者は「抗NMDA受容体脳炎」にかかっていた可能性が高いとされています。放っておくと死に至ることもある病ですが、適切な治療を受ければ、身体の機能も回復し、社会復帰も可能で、「彼女が目覚めるその日まで」のモデルとなったスザンナ・キャハランは記者として社会復帰を果たしています。「8年越しの花嫁 奇跡の実話」のモデルとなった中原麻衣さんが病気を発症した2006年当時は、病名がつけられておらず、診た経験のある医師も少なかったことから、治療は困難を極めたと思われます。

映画「8年越しの花嫁 奇跡の実話」あらすじ

映画チラシ 8年越しの花嫁 奇跡の実話 佐藤健

意識の戻らない恋人を、あなたは何年待てますか?
YouTubeの動画をきっかけに日本中に感動を巻き起こし、書籍化もされた奇跡の実話が、佐藤健、土屋太鳳のW主演で、遂に映画化。とある食事会で最初は印象がイマイチだった尚志(佐藤健)と麻衣(土屋太鳳)。だが、次第に心惹かれ合い、結ばれた二人。しかし、結婚式を間近に控えたある日、原因不明の病が突然、麻衣を襲い、意識不明に。いつ目が覚めるかわからない状態に、尚志は麻衣の両親から「麻衣のことはもう忘れてください。」と言われてしまいます。それでも尚志は、職場の同僚たちに支えられ、諦めず、麻衣の傍で回復を祈り続けます。その甲斐あって、1年後、麻衣は目覚めますが、さらなる試練が二人を待ち受けていました。これは一途な愛が生んだ、奇跡の物語です。

タイトル:「8年越しの花嫁 奇跡の実話」
2017年12月16日(土)丸の内ピカデリーほかにて全国ロードショー
配給:松竹
公式サイト: http://8nengoshi.jp/

主演は佐藤健×土屋太鳳が再タッグ!

本作のW主演を務めるのは佐藤健と土屋太鳳。映画「るろうに剣心 京都大火編/伝説の最期編」共演以来、3年ぶりの共演となります。「るろうに剣心」での共演では、土屋は男勝りな忍者役だったため、本作で、佐藤は初めて土屋に女性らしさを感じることができたそうです。

中原尚志/佐藤健

るろうにほん 熊本へ

病で目覚めない婚約者をひたすら待ち続け、目覚めてからも麻衣を想い続ける中原尚志。誰に何を言われても麻衣との約束を守るため、傍らで麻衣の看病を続けます。麻衣が目覚めてからも、常に麻衣の幸せを考え行動する、等身大で心温かな男性。

中原尚志を演じているのは、佐藤健。映画を中心に活躍し、日本屈指のアクションレベルを誇る実力派俳優。映画「るろうに剣心」シリーズ、「バクマン。」「亜人」など、難しいとされている漫画の実写化を次々成功させており、2018年公開予定の映画「いぬやしき」「ハード・コア」にも期待がかかります。反面、アクションのない映画「世界から猫が消えたなら」などは、大ヒットとまではいっていないので、本作で“アクションの佐藤健”から演技で魅せられる俳優への脱却を期待されています。本作で佐藤が演じている尚志はモデルとなった実在の中原尚志さんに雰囲気も外見もそっくりに作り込んでおり、佐藤の本作への気合いが感じられます。

中原麻衣/土屋太鳳

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アクティブでいつも前向きな中原麻衣。尚志と婚約し、幸せの絶頂の中、原因不明の病で昏睡状態に。1年後、目覚めた真衣は尚志との記憶を失い、身体も思うように動かず辛い闘病生活が始まります。その中で、思い出せずとも尚志の温かな想いに触れ、再び惹かれていきますが・・・。

中原麻衣を演じているのは、土屋太鳳。映画を中心に活躍し、その作品に対する真摯な姿勢が、本作でより生かされています。闘病シーンでは、4時間かかる特殊メークを施し、佐藤にトレーナー代わりを務めてもらい、体重コントロールをしながら臨みました。この闘病シーンもそうですが、麻衣が病を発症し、錯乱状態で半狂乱になり救急搬送されていく場面の壮絶さは、これまでの土屋では観たことのない鬼気迫る演技となっています。

佐藤と土屋は、尚志と麻衣の関係が芝居に見えないように、違和感があるところは二人で話し合って修正したり、なくしたりして、恋人同士のリアルな空気感が見えるように、ほぼ全シーンでディスカッションをしながら関係性を作っていったそうです。信頼関係で結ばれた二人が成長し、満を持しての共演した本作は、二人にとって転機となる作品になることでしょう。

歌物語

アクターズ・スタイル SPRING 2006 Bamboo Mook

他にも、麻衣の両親役に杉本哲太、薬師丸ひろ子、尚志の仕事仲間役に北村一輝、浜野謙太が演じるなど、サイドをしっかりした俳優陣で固めているので、彼らのシーンでも感じるところがたくさんあり、それぞれに感情移入できる作品に仕上がっています。

映画「8年越しの花嫁 奇跡の実話」見どころ

8年越しの花嫁 キミの目が覚めたなら

監督を務めるのは、映画「64‐ロクヨン—前編/後編」の瀬々敬久

瀬々敬久映画群盗傳

本作の監督を務めるのは、映画「64‐ロクヨン—前編/後編」の瀬々敬久(ぜぜたかひさ)。映画「64-ロクヨン-」「感染列島」のような大作映画から、映画「ヘブンズストーリー」「最低。」のような単館系作品まで幅広いジャンルで評価されてきた映画監督です。脚本はNHK朝の連続テレビ小説「ひよっこ」、ドラマ「最後から二番目の恋」など、日本ドラマ界屈指の安定感を誇る岡田惠和(おかだよしかず)。
これまで様々な愛の形を描いてきたタッグが贈る映画「8年越しの花嫁 奇跡の実話」は、前半でしっかりと二人が惹かれ合っていく楽しい日々を描き、後半に自然と感情移入してしまう構成が見事です。瀬々監督のじっくりと俳優陣の人間力を引き出す力と、丁寧に紡がれる物語は、よくある闘病系恋愛映画とは一線を画す上質なラブストーリーとなっています。

2006年に難病を発症

【映画パンフレット】 8年越しの花嫁 奇跡の実話

本作のヒロイン・麻衣がかかった脳症に正式な病名「「抗NMDA受容体脳炎」が名付けられたのは、2007年。本作のキーポイントのひとつは、麻衣が病気を発症し、病院に運び込まれたのが2006年だということです。つまり、尚志と麻衣、麻衣の家族だけでなく、医師たちさえも、麻衣の病気を扱ったことがないどころか、知らない状態での闘病スタートだったわけです。それがどんなに恐ろしく、困難な道のりであったのか、想像することができるでしょうか?麻衣も発症当時は、錯乱状態、幻覚、幻聴などがあったため、精神疾患と判断され、精神科に行かされてしまいます。当然、精神科の薬物療法では効果が得られるわけもなく・・・・。麻衣が目覚めた2007年に、「抗NMDA受容体脳炎」なのではないか?と診断できる医者に出会えたことも、“奇跡”と言って間違いないのだと思います。本作では、患者とその周囲に焦点を当てがちですが、現代医療のまだまだ至らない点や、原因不明の病に陥った場合、日本では患者がどのように扱われるのか?も、しっかりと観て学ぶべきところでしょう。

日本映画独特の落として上げる手法

ノベライズ版 8年越しの花嫁 奇跡の実話

本作を観て、日本的だなと感じたシーンが2つあります。1つめは、いつ目覚めるともわからない昏睡状態の麻衣を待ち続ける尚志に、麻衣の両親が「この子を諦めてください。」と言うシーン。2つめは、昏睡状態から目覚めたのは良いが、尚志のことを思い出すことができず、苦しむ麻衣に「もう会うのはやめよう。」と尚志が言い、麻衣と離れることを決意するシーンです。この2つのシーンには、日本人の言われる前に相手の気持ちを気遣い、先回りして発言する癖が出ている象徴的なシーンです。これらの「諦める」という選択は日本独特で、ハリウッド映画ではあまり観ることのない、とてもリアルな人間の生の感情だと思います。瀬々監督は、この中で生まれる、会えない時間、離れている時間が愛を育て、互いに想いを募らせていく感情を、効果的に描いています。だからこそ、一度諦めかけてからの麻衣の回復、尚志と麻衣の恋愛関係の復活の物語が、よりエモーショナルに観客の心に届き、感動の涙を誘うラストへと繋がっていきます。