第40回日本アカデミー賞ノミネート・注目映画を一挙ご紹介!

2017年1月16日に第40回日本アカデミー賞ノミネート作品が発表されました。
日本アカデミー賞は毎年12月に決まる報知映画賞やブルーリボン賞、キネマ旬報ベストテンなど数多くの映画賞のトリを飾る日本で最も大きな映画賞です。

新海誠監督作品 君の名は。 公式ビジュアルガイド

リップヴァンウィンクルの花嫁 [DVD]

2016年は、映画「君の名は。」「シン・ゴジラ」など賛否両論ありがらもマスコミをも巻き込み大ヒットした作品や、岩井俊二が12年ぶりの新作実写映画「リップヴァンウィンクルの花嫁」を発表するなど、邦画がとても元気な年でした。

その日本映画の集大成である第40回日本アカデミー賞の作品賞にノミネートされた作品を一挙ご紹介します。

最多12部門ノミネート!映画「怒り」

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主演は渡辺謙、共演は森山未來、松山ケンイチ、綾野剛、妻夫木聡、宮崎あおい、広瀬すずなど実力派俳優陣が結集。
東京・八王子で起こった夫婦惨殺事件。事件現場には「怒」の血文字が残され、犯人は顔を整形し逃亡。依然、事件解決の糸口がつかめないまま1年が過ぎ、東京・千葉・沖縄にそれぞれ素性も過去も知れない3人の男が現れます。
千葉の漁港にフラリと現れた男・田代(松山ケンイチ)と交際を始めた愛子(宮崎あおい)。東京に現れたどこか悲しげな男・直人(綾野剛)に惹かれ、同棲を始めたゲイの優馬(妻夫木聡)。沖縄の無人島に現れたバックパッカーの男・田中(森山未來)と自分の境遇を重ね、仲良くなっていく女子高生の泉(広瀬すず)。
ある事件をきっかけに心を閉ざしてしまった泉を救えず苦悩する同級生の辰也(佐久本宝)。
田代と愛子の交際を心配しながらも見守る愛子の父・洋平(渡辺謙)と従姉妹の明日香(池脇千鶴)。
原作・吉田修一×監督・李相日×音楽・坂本龍一で贈る人間関係が希薄な現代社会の闇に鋭く切り込んだ衝撃のヒューマンミステリー。
隣人や友人、愛する人の本当の姿をあなたは知っていますか?
愛した人が殺人犯かも知れないと思った時、それでもあなたを信じたい—。
これは人が人を信じることの難しさと人間の弱さを描いた物語です。

怒り DVD 通常版

本作からは主演女優賞に宮崎あおい、助演男優賞に森山未來、助演女優賞に広瀬すずなど最多11部門12ノミネートされています。
出演俳優が多数ノミネートされたのは、主役級の実力派俳優陣が勢揃いしていることと李相日監督の手腕によるところが大きいでしょう。

李監督が俳優に求める役柄へのアプローチは徹底したもので、妻夫木と綾野には「撮影期間中、ホテルで同居生活を送ること」、森山には「無人島でリアルに独りで生活すること」、松山には「家を出て孤独と向き合うこと」を提案しました。
役を演じるというよりは役として生きることが求められる李組を映画「悪人」で経験済みの妻夫木は撮影期間中、綾野とホテルで同居しお風呂も寝る時も一緒、撮影現場でも手を繋いだりキスをしたり、本当の恋人同士のように行動していたそうです。
映画「許されざる者」で李組を経験している渡辺もまた、父娘を演じている宮崎に対し、「何も話さなくていいから傍にいてほしい。」と提案。
普段、宮崎は撮影合間に一人で読書か編み物、手紙を書いていることが多いのですが、渡辺と行動をともにするうちに本当の親子のような空気感が出来上がりました。
初日舞台挨拶で「今日から映画が始まり、明日から“お父ちゃん”とはもう会えなくなっちゃうのかと思うと、寂しいところがあって。」と人見知りの宮崎が涙していたのが印象的です。
沖縄編を担った若手の広瀬と佐久本には李監督いわく「抽象的なことではなく具体的な演技指導」をスパルタで行い、二人はそれに必死に食らいついていったそうです。
本作の山場でもあるショッキングなシーンを撮影した広瀬は、カットがかかっても涙が止まらず、しばらく地面から起き上がることすらできないほど役へ集中しました。

今年度の日本アカデミー賞で、宮崎と広瀬はともに2部門にノミネートされています。
これまでの殻を打ち破って新境地を開いた二人の受賞の行方に注目です!

タイトル:「怒り」
2016年9月17日(土)TOHOシネマズ 日劇ほかにて全国ロードショー
配給:東宝
公式サイト:http://www.ikari-movie.com/

巨匠・山田洋次の傑作喜劇!映画「家族はつらいよ」

家族はつらいよ [DVD]

主演は橋爪功、共演は吉行和子、西村雅彦、夏川結衣、中嶋朋子、林家正蔵、妻夫木聡、蒼井優ほかです。
東京郊外に暮らす三世代同居の平田一家。無事に定年を迎え、平和な隠居生活を送っている平田家の主・周造(橋爪功)はいつものように靴下を脱ぎ捨てながら、ふと寝室に飾られたバラを見て「その花どうした?」と尋ねます。すると、妻の富子(吉行和子)いわく、今日は自分の誕生日で花は創作教室の仲間から貰ったものだと言います。妻の誕生日をすっかり忘れていた周造でしたが、たまには妻に誕生日プレゼントなどをしてやろうかと、欲しいものを聞いてみます。すると、妻が机から持ち出してきたのは、まさかの「離婚届」!
唖然とする周造を残して富子は冷静に部屋を出ていってしまい・・・。
こうして平田家の“離婚騒動”は幕を開けたのでした・・・。
映画「男はつらいよ」から20年。巨匠・山田洋次が贈る待望の人間喜劇です。

【チラシ付映画パンフレット】 『家族はつらいよ』 出演:橋爪功.妻夫木聡.蒼井優

本作は優秀作品賞、優秀脚本賞ほか、7部門にノミネートされています。
山田監督とタッグを組むのは、映画「武士の一分」「母と暮せば」など多くの山田作品の共同脚本を手掛けてきた平松恵美子です。
山田監督のもとに映画「東京家族」のキャスト陣が再結集。
今、社会問題とも流行ともいえる“熟年離婚”をテーマに、笑いあり涙ありの古き良き日本のホームコメディー映画です。
始めから終わりまで打てば響くといった具合に登場人物が怒ったり、転んだり、椅子から落ちたりするたびに観客も大笑い。
予測不能などんでん返しの展開や圧倒されるほどの映像美などはありませんが、安心して観ることのできる、観客が山田監督に求めているものに、監督とベテラン俳優陣が阿吽の呼吸で見事に応えてみせた作品です。

2017年5月27日には続編となる映画「家族はつらいよ2」が公開されます。
次に平田家を襲うのは、周造の“高齢者の運転免許返上”問題。
常に社会問題と正面から向かい合いながら、同時に家族の絆を描いてきた山田洋次監督。
笑いながら観ているうちに、どんな苦境にもユーモアたっぷりに乗り切っていく人生のヒントが見つかる一石二鳥な作品です。

タイトル:「家族はつらいよ」
2016年3月12日(土)新宿ピカデリーほかにて全国ロードショー
配給:松竹
公式サイト:http://kazoku-tsuraiyo.jp/

日本が世界に誇る特撮映画の王様!映画「シン・ゴジラ」

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主演は長谷川博己、共演は石原さとみ、竹野内豊、市川実和子ほか総勢329名のキャストが総出演。
物語の舞台は現代日本。
突如、海から出現した巨大生物「呉爾羅(ゴジラ)」を相手に日本政府が世界と協力して立ち向かう様を描いたSFスペクタクル映画です。

シン・ゴジラ劇伴音楽集

本作からは主演男優賞に長谷川博己、助演女優賞に石原さとみ、市川実和子など10部門11にノミネートされています。
本作のメガホンを取った庵野秀明監督は、「ゴジラ」シリーズ初のフルCGを採用し、モーション・キャプチャーを狂言師の野村萬斎が演じました。
12年ぶりの新作となる本作に登場するゴジラはシリーズ史上最大の118.5m!
新宿歌舞伎町の新名物となっているTOHOシネマズ新宿のゴジラが約52mなので、その2倍以上と考えるとどれだけ大きいかがわかります。
ハリウッドの「GODZILLA」は破壊メインで描いたのに対し、本作は、ゴジラに対して生き残った人間たちがどう対抗するのか?をメインに描いているので、もし本当にそうなったら?というリアルな描写が恐怖心を倍増させてくれます。
日本のゴジラの良さは、ゴジラが日本の悲しみの象徴として神格化され表現されているところだと思います。
庵野監督が命名したタイトルの「シン・ゴジラ」の意味も、「新」しいゴジラであり、「真」のゴジラであり、「神」のようなゴジラであり、深い意味と想いが込められています。
あまりの大作からギリギリまで監督が決まらなかった本作ですが、実は犬童一心、緒方明、塚本晋也、原一男、松尾スズキといった映画監督たちもさりげなく出演しています。
「ゴジラ」シリーズがどれだけ日本映画界で愛されているかがよくわかりますね。

個人的には、政治用語だらけ、男だらけ、オジサンだらけのオンパレードの中で、自由過ぎる演技でしっかり爪痕を残している、今うなぎ上りで人気が出ている俳優の高橋一生がツボでした。

これだけの大型作品なので日本では賛否両論が巻き起こりましたが、ハリウッドなど海外では、台詞の字幕が速過ぎてついていけないということ以外は、おおむね好評だったようです。

タイトル:「シン・ゴジラ」
2016年7月29日(金)TOHOシネマズ 新宿ほかにて全国ロードショー
配給:東宝
公式サイト:http://www.shin-godzilla.jp/

母の愛は銭湯より熱い!?映画「湯を沸かすほどの熱い愛」

湯を沸かすほどの熱い愛 通常版 [DVD]

主演は宮沢りえ、共演はオダギリジョー、杉咲花、松坂桃李ほかです。
銭湯を営む幸野家は、父(オダギリジョー)が一年前に理由も告げずにフラリといなくなってから休業状態。母・双葉(宮沢りえ)は持ち前の明るさと強さで、パートをしながら娘・安澄(杉咲花)を育てていましたが、ある日体調が優れず病院へ行くと、余命2ヵ月という宣告をされてしまいます。その日から双葉は「絶対にやっておくべきこと」リストを作り、父を連れ戻し、安澄を奮い立たせ、家族からすべての秘密を取り払い、幸野家はぶつかり合いながらも強い絆で結ばれていきます。
そんな双葉の行動を見た家族は究極の愛を込めて母を葬ることを決意。
死にゆく母の熱い思いと、想像もつかない驚きのラストに、涙と生きる力が沸いてくる家族の愛の物語です。

【一般券】『湯を沸かすほどの熱い愛』 映画前売券(ムビチケEメール送付タイプ)

本作からは主演女優賞に宮沢りえ、助演女優賞に杉咲花など5部門にノミネートされています。
1年に1本のペースで作品を吟味しながら映画に出演し続けている実力派女優の宮沢りえ。
本作の監督を務めた中野量太がどのような人物なのか?作品を作っているのか?を知らずに、脚本を読み、出演を快諾したそうです。
奇しくも宮沢と同じ歳生まれの中野は、これまでに撮った映画「チチと撮りに」がベルリン国際映画祭に招待されるなど海外では注目されている気鋭の監督ですが、日本で有名俳優を起用しての大型作品は初めてとなります。

日本の古き良き文化「銭湯」と「人が道半ばに死ぬこと」をテーマにした本作。
人は死を目の前にすると周囲や自分がそれまで秘密にしてきたことが明らかになってしまうことや、生活を共にし、心が繋がった者同士を「家族」と呼ぶという中野監督の強い意志と宮沢たちの愛と愛をぶつけ合う熱い演技が大きなうねりを持って、驚きのラストに向かって突き進みます。
もともと痩せ型の宮沢ですが、余命宣告を受け死に向かっている双葉を演じるにあたって絶食をし、短期間で驚くほど痩せている彼女の女優魂を感じずにはいられませんでした。双葉の母でいる時の顔と一人でいる時の顔が全然違うのも、双葉という女性の多面性を中野監督の意図以上に体現しており、素晴らしいです。
双葉の娘・安澄を演じた杉咲もそれに応える形で、本作で彼女の度胸と本気を観た気がしました。
杉咲の小学生から高校生まで演じることのできる容姿も演技も他の若手女優の追随を許さない唯一無二の女優でしたので、今回の助演女優賞のノミネートでやっと!世間に認知されたのを嬉しく思います。
2016年度の助演女優賞は広瀬すずと杉咲の若手女優対決になるのではないでしょうか?

スタジオ・ジブリの志と技術を受け継いだスタジオ・ポノックの第1回長編アニメーション映画「メアリと魔女の花」(2017年7月8日公開予定)で主演声優を務めることが発表されたばかりの杉咲花の今後から目が離せません!

タイトル:「湯を沸かすほどの熱い愛」
2016年10月29日(土)新宿バルト9ほかにて全国ロードショー
配給:クロックスワーク
公式サイト: http://atsui-ai.com/

横山秀夫の傑作ミステリーを映画化!映画「64 -ロクヨン-前編」

64-ロクヨン-前編 通常版Blu-ray

主演は佐藤浩市、共演は永瀬正敏、綾野剛、榮倉奈々、吉岡秀隆、三浦友和ほかです。
わずか7日間で幕を閉じた昭和64年。
その7日間の間に発生した未解決の少女誘拐事件、通称「ロクヨン」。
少女は死亡、未解決のままという県警最大の汚点として14年が過ぎ、時効が近づいていました。
平成14年、県警広報官の三上(佐藤浩市)は、警察という組織の中で生きる個人としての葛藤を背負いながらも、常に広報官としてマスコミからの外圧にさらされ、さらには父親として、娘(芳根京子)の家出失踪という家庭問題も抱えていました。
記者クラブとの確執、キャリア上司との闘い、刑事部と警務部の対立のさなか、ロクヨンをなぞるような新たな誘拐事件が発生。
三上が「ロクヨン」事件の真相にたどり着いた先に見たものとは—?
日本映画界最高峰の超豪華オールスターキャストが二部作で贈る究極のミステリー感動巨編です。

64-ロクヨン-後編 通常版Blu-ray

本作からは主演男優賞に佐藤浩市、優秀音楽賞、優秀撮影賞など10部門にノミネートされています。
始めにご紹介した映画「怒り」が若手実力派俳優を集めたものならば、本作は断層の世代と呼ばれるベテラン俳優陣が集結。
永瀬正敏、滝藤賢一、緒方直人などの鬼気迫る演技バトルにスクリーンを通してビリビリ威圧されっぱなしです。
正直、2016年度の助演男優賞は本作のキャストで占められると思っていたので、そうではないのが意外なほど、オールキャストによる長回しの攻防シーンは憎悪や狂気などが入り混じり、ド迫力です。
若手からは瑛太、綾野剛、柄本佑、そして事件の鍵を握る日吉を演じた窪田正孝がベテラン勢の中でも埋もれることのない名演を見せています。

警察内外の複雑な人間模様を描きつつも、前編が「我が子を失うとはどういうことか。」に主軸を置き、後編が「我が子を失った記憶と悲しみはどれだけの年月が経とうとも決して薄らぐ事はない。」という真実を突き付けられる構成になっていて、そこに一切のブレがないので、時間軸やさまざまな人物や場面が交錯してもラストまで流れが滞ることなく駆け抜けているのが素晴らしいです。
特に後編。二部作ものだと前編で大風呂敷を広げて、後編で回収しきれず盛り上がりきれずに終わってしまう作品も多い中、本作の後編は驚きに次ぐ驚きと悲しみの波が交互に押し寄せてきます。
原作の結末のその先まで描いた本作はエンドロールに切り替わるその瞬間まで観客の感情を揺さぶり続ける逸作です。
とても重厚ながら、誰一人として登場人物が埋もれることなく描けているので、誰が誰だかわからなくなるということもなく、普段ならこの手の作品を敬遠しがちな若い方や女性の方にぜひお勧めしたい作品です。

タイトル:「64 -ロクヨン‐前編」
2016年5月7日(土)TOHOシネマズ 日劇ほかにて全国ロードショー
配給:東宝
公式サイト: http://64-movie.jp/

いかがでしたか?
第40回日本アカデミー賞授賞式は2017年3月3日・ひなまつりに行われます。
その様子は日本テレビ系にて生中継されますので、ぜひ見てみてくださいね。

(文 / Yuri.O)