岩井俊二12年ぶりの新作!映画「リップヴァンウィンクルの花嫁」の魅力総まとめ!

2016年3月26日に、岩井俊二の新作映画「リップヴァンウィンクルの花嫁」が劇場公開されました。
岩井俊二が、日本で実写の物語作品を手掛けるのは、映画「花とアリス」以来、なんと12年ぶり!
待って待って待ち望んだ待望の新作です。

ここでは、そんな映画「リップヴァンウィンクルの花嫁」のストーリーをご紹介しつつ、本作の魅力に迫っていきたいと思います。

まずは、本作のストーリーをご紹介。

主人公の声の小さな皆川七海(黒木華)は、派遣教員の仕事を早々にクビになり、SNSで手に入れた結婚も、夫(地曵豪)に浮気され、逆に浮気の濡れ衣を着せられ、家を追い出されてしまいます。行き場をなくした七海は、SNSを通して知り合ったなんでも屋の安室(綾野剛)に月に100万円稼げるというメイドのバイトを紹介され、引き受けます。主のいない大きな屋敷で待っていたのは、破天荒で自由なもうひとりのメイド、里中真白(Cocco)。ある日、真白はウェディングドレスを買いたいと言い出しますが・・・。岩井俊二が描く現代の夢と希望と愛の物語です。

本作は、なんと3時間15分もある超大作!
12年も待った甲斐があり、じっくり、みっちり、岩井ワールドを堪能出来る作品に仕上がっています。

タイトル:「リップヴァンウィンクルの花嫁」
2016年3月26日(土)新宿バルト9ほかにて全国ロードショー
配給:東映
公式サイト:http://rvw-bride.com/

「リップヴァンウィンクル」って何?

リップヴァンウィンクルの花嫁

本作のタイトルにもなっていて、劇中にも登場する聞きなれない「リップヴァンウィンクル」という言葉。
アメリカの小説家ワシントン・アーヴィングが1820年に発表した短編小説「リップ・ヴァン・ウィンクル」のタイトルと、その主人公の名前なんです。
ストーリーは、アメリカ版「浦島太郎」と言われているもので、アメリカ独立戦争から間もない時代に、木こりで呑気者のリップ・ヴァン・ウィンクルは、いつも口うるさい妻にガミガミ怒られながらも、ハドソン川の自然を愛していたが、ある日、愛犬と共に猟に出て、深い森の奥へ入り込んでしまいました。すると、リップの名前を呼ぶ老人に出会い、彼についていくと、森の奥の広場で不思議な男たちが、玉遊びに興じ、彼らと共に愉快に酒盛りをしているうちに、リップが眠りこけてしまいます。リップが目覚めると、町の様子はすっかり変わっており、友人は皆年を取ってしまい、アメリカは独立していて、ガミガミうるさかった妻は、他界していました。彼が、ひと眠りしている内に、世の中は、20数年もの歳月が流れてしまっていたというお話です。
この「リップ・ヴァン・ウィンクル」のストーリーも、名前だけでなく、映画の中で、反映されているので、映画を観て、興味が湧いた方は、是非読んでみてくださいね。

主演は、初の映画単独主演となる黒木華

本作の主人公・皆川七海を演じることになったのは、黒木華(くろきはる)。
弱冠26歳にして、昨年2015年と一昨年に2年連続で、日本アカデミー賞最優秀助演女優賞を獲得した演技派女優です。2年連続で、最優秀助演女優賞を獲得したのは、史上2人目の快挙なのです。(一人目は、余貴美子さん。)
また、最優秀助演女優賞を獲得した2014年の映画「小さいおうち」では、第64回ベルリン国際映画祭最優秀女優賞(銀熊賞)も受賞しており、こちらは、日本人では4人目の受賞で、当時23歳だった黒木さんは、日本人では最年少での受賞となりました。
日本映画界に彗星の如く現れたような黒木さんですが、実は、高校時代から、演劇部に属し、大学も芸術学部映画学科に進学、その在学中の2009年に、野田秀樹が主催する演劇ワークショップに参加し、そのまま、NODA MAPの舞台「ザ・キャラクター」にアンサンブル出演を果たし、その後も、ヒロイン役として、野田さんの舞台に出演していたという、本当に演じる事が大好きな、根っからの女優気質な方なんですね。
岩井監督は、黒木さんの事を「(「小さいおうち」「母と暮せば」の)山田洋次さんとも持ってるとしか言いようがないと話していた。どっか(映画に)愛される天性のものを持っている子なんだろうなと思う。」と、絶賛しています。野田秀樹、蜷川幸雄、山田洋次監督、岩井俊二監督と、著名な監督たちが大絶賛する黒木華の、満を持しての初単独主演作です!

岩井俊二×黒木華の初タッグ!

キネマ旬報 2016年4月上旬 No.1713

黒髪に、ゆるふわパーマ、ふんわりした少女の雰囲気・・・黒木さんは、岩井監督が好きそうな女優さんだなぁと、彼女が次々と映画に出演し始めた頃に思って見ていたら、映画「リップヴァンウィンクルの花嫁」の情報が飛び込んできまして、「やっぱり!」と思ってしまいました。
本作は、4年前に、岩井俊二が主催する「マイリトル映画祭」の中の、「映画に愛される未来の女優を探す」というテーマで行われたオーディションで、当時まだ、映画賞を総なめする前の黒木さんを見出し、彼女にアテ書きする形で書かれたのが、この映画「リップヴァンウィンクルの花嫁」です。
4年前ですら、野田秀樹さんや蜷川幸雄さんなどに既に見出されていた黒木さんですが、そこは、流石の岩井俊二監督!今までに観たことのない彼女の、表情、仕草、演技が、映画の中に溢れていて、「あれ?黒木華ってこんなに可愛かったっけ?」と驚いてしまいました。
劇中に、黒木さん演じる七海が、家を追い出されてしまい、自分の居場所がわからなくなってしまい、泣きだしてしまうシーンがあるのですが、その子どものように泣きじゃくる姿が、今まで観たことがないくらい可愛らしく、放っておけないと、つい思ってしまうような、普通なんだけど、不思議な魅力ある女の子として映し出されています。女性を、可愛らしく撮ることにかけては、随一な岩井マジック、流石!といったところでしょうか。
黒木さん自身も岩井監督には強い憧れを持っていたと言い、本作の現場では、憧れていた岩井監督の愛情をひしひしと感じ、「幸せな時間でしかなかった。そんな幸せの映画を多くの方に観ていただくということで、幸せの限界がきそうなくらいです。」と初日舞台挨拶では、感無量といった表情で語っておられました。
そんな相思相愛な二人が初タッグを組んだ映画「リップヴァンウィンクルの花嫁」、新しい岩井ワールドの幕開けです。

共演には、綾野剛、Cocco、りりぃ、夏目ナナと多彩なキャストが集結!

本作で、黒木さん演じる主人公の七海の前に表れる「なんでも屋」の安室を演じているのが綾野剛、安室から紹介されたバイト先で知り合い、七海と意気投合する破天荒な女性・里中真白役をCoccoが演じています。岩井作品に登場する人物としては、異質な雰囲気を放つ二人ですが、柔らかな雰囲気と時間が流れる空間に、異質な二人を投入することによって、物語が動き出すといった具合で、とても良いスパイスになっています。綾野さん演じる安室は、「安室」という名前自体、偽名で、本名も何もわからず、いつも違う服装や髪形で、七海の前に表れ、彼女を次の場所へと誘います。虚構で塗り固められていますが、東京といる場所に存在していることは確実という意味では、この「安室」という人物が、この映画を象徴している人物だと思いました。その安室とは反対に、全てがオープンで人懐っこいように見えて、実は物語の鍵となる秘密を隠している女性・真白を、Coccoが、彼女のキャラクターそのものなんじゃないかというくらい自然に、彼女の持つ独特の空気感をそのままに、演じています。綾野さんもCoccoさんも、「いつか岩井さんの作品に出てみたい。会ってみたい。」と長年思っていたそうで、念願叶って、とにかく幸せといった話を舞台挨拶でされていました。他にも、真白の母親役にりりぃ、真白のマネージャー役に、元AV女優の夏目ナナなど、これまでの岩井作品では、見られないようなキャスティングがされており、その答えは映画の中に詰まっており、驚きと共に、「なるほど!」と納得がいく配役でした。彼らが、映画の中で、どう生きているか、気になる方は、ご自身の目で確かめてみてください。

岩井作品、新しいステージへ!岩井流・社会風刺ファンタジー映画が完成

12年ぶりの日本での新作は、これまで岩井さんが、海外作品(「ニューヨーク・アイラブユー」「ヴァンパイア」「恋愛中の都市」)で培った撮影経験を詰め込んだ、こんな岩井作品観たことない!と言えるような、色々な要素が詰まった作品です。岩井作品の特徴的であるおとぎ話的なファンタジー要素はそのままに、初めから綿密な伏線が張り巡らされていて、ミステリーになっていたり、「優しさはお金で買えるけれど、お金で優しさは買えない。」といったような哲学的なメッセージが込められていたり、一度観ただけでは、気づけないニュアンスがたくさんあって、何度も繰り返し観たくなる、後々、台詞や場面が浮かんで「良かったなぁ。」と深い余韻に浸れる作品に仕上がっています。主題は、現代のネット社会、SNSの怖さや、それに伴う人間関係の希薄さを、「結婚式の疑似家族」という形を通して、少し辛辣に描いたものなのですが、その逆に、そんな社会でも、深く繋がることが出来る人と人との関わり合いも描いていて、批判するだけじゃない、優しさで人を包み、フォローすることを忘れないところが、岩井さんらしいなと思うような、温かさと切なさが詰まった作品です。3時間15分という長い上映時間だけでなく、岩井作品の集大成との呼び声が高い意味でも、大注目の新作は、是非劇場で!

いかがでしたか?
昨年2015年は、映画「スワロウテイル」で結成されたバンド・YEN TOWN BANDが20年ぶりの新作を発表したり、今年2016年は、岩井さんが長年12年間で培った撮影経験を、本作、映画「リップ・ヴァン・ウィンクルの花嫁」に詰め込んで発表したり、「本格始動」という言葉が頭に浮かびます。本作のプロデューサーである宮川朋之氏は、映画について、「作家性の強いものにこだわり、大手との差別化を図った。その結果、次の10年、20年先の岩井監督の作品を見たいと思える、エポックメイキングな作品になったと思う。」とインタビューで、その自身をのぞかせています。岩井作品の、次のステージへの最初の一歩となる映画「リップヴァンウィンクルの花嫁」は、絶賛公開中です。是非、劇場へ足をお運びください。

(文 / Yuri.O)