2015年度日本アカデミー賞最多ノミネート 映画「海街diary」の魅力総まとめ!

2016年1月18日、第39回 日本アカデミー賞優秀賞が発表されました。
映画「海難1890」「日本のいちばん長い日」「母と暮せば」など、戦争映画や歴史大作が並ぶ中、映画「海街diary」は、漫画原作ものながら、最多12部門にノミネートされました。
39年の日本アカデミー賞の歴史の中で、漫画原作もののノミネート自体、余り多くなく、最優秀作品賞を獲得した作品は未だありません。
そんな中、昨年は、映画「そして父になる」でノミネートされたものの、最優秀は逃した是枝裕和監督が、今年は、最優秀なるか!?と期待が高まっています。
最優秀作品賞の大本命と言われている、映画「海街diary」の魅力に迫っていきたいと思います。

吉田秋生の漫画「海街diary」の魅力

海街diary 1 蝉時雨のやむ頃 (flowers コミックス)

吉田秋生原作の漫画「海街diary」は、「月刊フラワーズ」で不定期に連載されている漫画で、単行本は、現在(2016年2月現在)、7巻まで発売されています。鎌倉で暮らす腹違いの4姉妹の物語で、家族の繋がりや、ご近所の繋がりを中心として物語が展開していきます。第11回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞、「このマンガを読め!2008」では1位を獲得、「このマンガがすごい!2008 オンナ編」では2位、マンガ大賞2013で大賞を受賞、そして今年に入ってからは、第61回小学館漫画賞を受賞するなど、数々の漫画賞を獲得し、教育面、芸術面での評価も高く、漫画としても、一般読者に「面白い!」と支持されています。吉田秋生の漫画は、「海街diary」以外にも、これまでに、「櫻の園」「吉祥天女」「ラヴァーズ・キス」「YASHA−夜叉—」などが、既に実写化されていて、「海街diary」も、是枝監督が映画化したいと思った時には、既に他の方に映画の原作権がわたっており、一度は諦めたものの、その後、権利を手放したという連絡が入り、「今度こそ!」という思いで映像化が決まりました。様々な偶然やタイミングが重なり、是枝監督の元にやってきた「海街diary」。運命を感じますね!その様な経緯があったからか、是枝監督が熱い思いを持って、臨んだ作品です。

是枝裕和監督の人柄に惹かれて様々な実力派俳優・女優が集結!

今や日本だけでなく、世界に映画ファンを持つ是枝裕和監督。2004年に監督4作目で撮った映画「誰も知らない」がカンヌ国際映画祭にて、映画史上最年少の最優秀男優賞(柳楽優弥)を受賞し、世界から注目を浴びました。その後、阿部寛主演の映画「歩いても 歩いても」が国内外で高く評価され、2013年の「そして父になる」では、第66回カンヌ国際映画祭コンペティション部門審査員賞を受賞。最新作である映画「海街diary」も、同映画祭の同部門に正式出品されました。

そんな是枝監督の作品に出たいという役者は後を絶ちませんが、是枝監督の人柄に惹かれて、またやりましょうと、彼の作品に何度も出演する「是枝組」が出来上がりつつあります。映画「奇蹟」以来、2度目の是枝組となる長澤まさみは、インタビューで「是枝さんの現場にいる人たちは、そこにいることにすごく幸せを感じているように思いました。この日々が永遠に続けばいいのにって思っている人しかいない現場だから、映画の中の日々があるように、日々の生活が是枝組にもある。そういうことが、既にかけがえのない時間になっていたように思いますね。」と語っています。ティーチイン試写会の際は、同席した樹木希林に「この方と知り合いになってちょっとの間がたちますが、人間的にも非常にみんなに好かれるタイプで、自分の意欲をあらわにすることはあまりない人なので、驚いてますけど、面白いですね。」と是枝監督を褒めちぎる場面もありました。また、かつて是枝組で助監督を務めていた砂川麻美監督が、本作品の撮影現場を表敬訪問した際に、砂川監督の意見を助監督から伝え聞いた是枝監督が、台詞を書き換えるという出来事がありました。このように、是枝監督の撮影現場では、色んなスタッフや役者が意見を言い、スタッフは皆一同に「監督は僕らの話を聞いてくださるから、思ったことはちゃんと伝えさせて頂いているんです。」と明かしています。自分の作品というよりは、良い映画を、世界中の映画ファンに届けたいという是枝監督の思いが、是枝組の結束を強固なものとし、素晴らしい現場、素晴らしい映像作品へと繋がっていくのですね。

美人4姉妹がカンヌを座巻!

海街diary

これまで世界の数々の映画祭に作品を出品し、ノミネート、受賞していきた是枝監督。映画「海街diary」も、第68回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に正式出品され、是枝監督と、主演の綾瀬はるかさん、長澤まさみさん、夏帆さん、広瀬すずさんが、フランス・カンヌ国際映画祭のレッドカーペットに登場しました。綾瀬はるかさんは、胸元が大きく開き、スカート部分がふんわりしたクリスチャン・ディオールのドレスで登場し、彼女の柔らかい雰囲気に合わせた優しい色合いが印象的でした。映画「大平輪」に続いて2年連続のカンヌ訪問となる長澤まさみさんは、ステラ・マッカートニーのダークグリーンとブルーのセクシーなベアトップドレスで観客を魅了し、夏帆さんは、サンローランの鮮やかなブルーのドレスで、長澤さんと合わせてレッドカーペットで両端を歩きました。最年少の広瀬すずさんは、ライトブルーとホワイトのチェックのドレスで、清楚な雰囲気を際立たせていました。映画上映中は、4姉妹のちょっとしたやりとりで笑いが起き、上映後は、4姉妹と是枝監督が退場するまで、スタンドオベーションが鳴りやみませんでした。上映終了後のインタビューで、4人の女優さんは皆、「また絶対にカンヌに来られるように頑張りたい。」と決意を新たにしていました。この経験を糧に、日本で良い映像作品を作り、再び世界へと羽ばたいていって欲しいですね。

スピルバーグも絶賛!是枝監督の独特な撮影方法

「海街diary」の撮影は、鎌倉の春夏秋冬の美しさや空気をそのまま切り取る為、1年間にわたって行われました。これは、映画の撮影スケジュールとしては長い方で、四季折々の風情を取り込みながら、丁寧に映画を作っていく、是枝監督のこだわりが垣間見られる撮影になりました。カンヌ映画祭のインタビューで是枝監督が「季節の変化や光の変化といったものを丁寧に描いたつもりでいます。」とおっしゃっていました。是枝監督は、子供を撮る時に、「台本を渡さない」という撮影方法を撮ります。これは、映画「奇蹟」「そして父になる」の時も使われた手法で、自然なやりとりや演技を引き出す為に、監督自身が撮影直前に子役に台詞をささやき、それを子役が演じるという方法です。映画「そして父になる」でカンヌ国際映画祭を訪れた際に、スピルバーグと対面した是枝監督が、スピルバーグに「僕も同じだよ!ETの時は、そうやって子供たちを演出したんだ!」と言われ、監督にとっては夢のような存在であったスピルバーグ監督に言われたことに感動したそうです。「海街diary」の撮影でも、広瀬すずさんに、この手法が使われました。その手法によって、劇中で、広瀬さん演じるすずが、子供から少女に成長していく様が、より身近な存在として、キラキラと眩しい輝きを持って、映し出されたのですね!

食卓を囲むシーンの意味

是枝作品では、よく食卓でごはんを食べるシーンがある意味を持って出てきます。それは、いる者を描くことで、「いない者」の存在を浮き彫りにするということです。「海街diary」の4姉妹の場合は、4人が食卓を囲むことで、亡くなった父親と、いなくなった母親の存在がより浮彫になり、観客の頭に強く印象に残ります。是枝監督は、「原作者の吉田秋生さんには、「お任せします」と言われたのですが、唯一、「アライさんだけは出さないでください。と言われたんです。」とインタビューでおっしゃっています。アライさんは、看護師である幸の後輩で、原作では、幸を始め様々な人の会話の中に登場するのですが、アライさん自身は一度たりとも登場したことがありません。是枝監督は、「(海街diaryの)登場人物たちは、その場にいない人たちを意識しながらみんな、生きている。どうやっていない人を感じさせられるか?やるだけやろう。」と覚悟の元に撮影したそうです。

劇中に登場する鎌倉名物と香川家名物の食べ物が美味しそう!

「海街diary」では、4姉妹が食卓を囲むシーンが多く登場します。その食卓で幸と佳乃が口喧嘩をしながら朝食を食べたり、千佳とすずが思い出を語りながら、距離を縮めたりします。そこで、一緒に登場する食べ物がまた美味しそうなこと!原作に出てくる生シラス丼に、おばあちゃんのちくわカレー、海猫食堂のアジフライ、山猫亭のしらすトーストなどが見事に再現されているんです。特に、生シラス丼をすずが大口を開けて掻っ込み、それを3姉妹に微笑ましそうに見つめるシーンは、4人が家族になっていく、とても素敵なシーンとして描かれているので、美味しそうな食べ物と共に、注目して観てみてくださいね。

広瀬すずという女優の存在

「海街diary」のティーチイン試写会の時に、登壇した樹木希林さんが「(広瀬)すずちゃんに出会ったのが、この映画のポイントでしたね。」と指摘すると、是枝監督が、「(「誰も知らない」の)柳楽優弥くんのときもそうでしたが、この子(広瀬すず)に出会ったことで、この映画が動き出しました。」と答えておられました。樹木さんは「ツイてましたね。でも運も才能のうちです。」と監督をべた褒めしておられましたが、映画初出演の広瀬すずを同じ名前のすず役に起用したことと、ちょうど映画公開の時期に、広瀬さんが大ブレイク真っ最中だったことと、色々な事が上手くタイミングがあって、素晴らしい映画が生まれるのだなと思わせられたエピソードでした。劇中で、広瀬さんが演じたすずは、どこか影があって、でも血のつながらない姉たちに甘えたい気持ちもあって、友人と一緒の時は、男の子顔負けにサッカーに取り組んでみたり、桜並木を自転車の2人乗りで失踪したり、色々な顔も持っている女の子です。そんなすずという少女を、今が旬の広瀬すずさんが演じたことは、やはり運命だったのかも知れませんね!

いかがでしたか?
映画「海街diary」は、4姉妹の日常を丁寧に丁寧に追っていく、比較的ゆっくりした時間が流れる映画ですが、それぞれに抱えているものは、深かったり暗かったりするものも多く、色々な事が細かく設定され、描かれているので、エピソードは幾ら語っても語りつくせない程です。こちらで紹介したエピソードを読んでいただいてから、作品を観ていただくと、また違った視点で観られると思いますので、日本アカデミー賞前に、もう観たという方もまだ観ていないという方も、是非、映画「海街diary」をご覧になってください。

(文 / Yuri.O)