2015年度日本アカデミー賞ノミネート作品総まとめ

ハリウッドの第88回アカデミー賞のノミネーションが発表された4日後の2016年1月18日、日本でも、第39回 日本アカデミー賞優秀賞が発表されました!

日本の賞レースは、毎年、11月前後の報知映画賞を皮切りに、ヨコハマ映画祭、キネマ旬報、ブルーリボン賞と続きまして、大トリの日本アカデミー賞が、1月に優秀賞発表、3月に授賞式が行われます。

今年の授賞式は、2016年3月4日(金)、グランドプリンスホテル新高輪・国際館パミールにて行われます。
司会は、俳優の西田敏行さんと、女優の宮沢りえさんです。

「優秀賞発表」の記者会見で、3年連続で司会を務める西田さんは、「昨年、日本を代表する素晴らしいお相手を選んでいただき、大変嬉しく思っています。授賞式当日は楽しい司会進行を務めたい。」とコメントしておられました。
また、昨年、映画「紙の月」で最優秀主演女優賞を獲得した宮沢さんは、「日本アカデミー賞最優秀主演女優賞という素晴らしい賞をいただくと次の年の司会という大役がもれなくついてくるという現実に背筋が伸びる思いです」とコメントしておられました。

日本アカデミー賞は、ハリウッドのアカデミー賞と違って、映画の祭典とは言いますが、まだまだ堅苦しい部分が多く、俳優・女優さんたちも、インタビュー慣れしていない方たちが、緊張の面持ちで臨むというのが、毎年の恒例となりつつありますが、今年は、西田さんが司会進行を務めて下さるので、楽しいインタビューが期待出来そうですね!

また、昨年は、映画「好きっていいなよ」「神さまのいうとおり」「イン・ザ・ヒーロー」などで、新人俳優賞を受賞した福士蒼汰が、「(新人賞を受賞した)皆で映画界を盛り上げたい。」とコメントをして、場が拍手喝采で盛り上がるなど、授賞式の雰囲気も、若い俳優たちの勢い同様、年々増していっているように思います。

今回は、そんな第39回 日本アカデミー賞の優秀作品賞にノミネートされた5作品をご紹介します。

日本が世界に誇る才能・是枝裕和監督の映画「海街diary」

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吉田秋生原作の人気漫画「海街diary」を、映画「奇蹟」「そして父になる」などの是枝裕和監督が実写映画化。
主演は、綾瀬はるか、共演に、長澤まさみ、夏帆、広瀬すず、樹木希林、大竹しのぶなど、実力派揃いの作品です。父親の違う4姉妹が、父の死をきっかけに出会い、共に暮らし、様々な人たちと触れ合う中で、本当の家族になっていく、深く心に響くヒューマンストーリーです。是枝監督は、漫画原作ものを撮るのは初めてでしたが、是枝監督が初めて原作の第1話を読んだ時、映画の中でも素晴らしいシーンのひとつとなった「父の葬式の後に、4姉妹が高台に登って街を見下ろすシーン」の映像や音楽が、瞬時に、是枝監督の頭の中に流れたそうです。この素晴らしいシーンの他にも、すずと風太が桜のトンネルを疾走するシーンがキラキラ眩しく美しかったり、原作漫画に登場する鎌倉名物の生シラス丼にしらすトースト、香田家名物のちくわカレー、庭の梅の木から採った梅で作った梅酒など、食べ物たちがどれもとても美味しそうに描かれています。是枝監督の作品には、食卓を囲むというシーンが重要視されているものが多くあり、本作も、生シラス丼をすずが大口を開けて掻っ込むシーンが、すずが家族の一員になっていく重要なシーンとして描かれています。本作は、カンヌ国際映画祭にも正式出品されており、第39回日本アカデミー賞では、優秀作品賞、優秀主演女優賞、優秀助演女優賞などを含む最多12部門にノミネートされています。第37回日本アカデミー賞では、「そして父になる」がノミネートされるものの、最優秀賞は逃したので、今度こそ!と期待がかかる、大本命と言われている作品です。

タイトル:「海街diary」
2015年6月13日(土)TOHOシネマズ日劇ほかにて全国ロードショー
配給:東宝=ギャガ
公式サイト:http://umimachi.gaga.ne.jp/

日本とトルコの海難事故、その救助を描いた映画「海難1890」

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1890年、日本の串本で発生した当時オスマン帝国だったトルコの親善訪日使節団を乗せた軍艦「エルトゥールル号」の海難事故と、そこから95年後の1985年に起きた、サダム・フセインがイラン上空を飛行する飛行機に対して48時間後に無差別攻撃を開始することを宣言した際に、トルコが、イランにいた邦人を救出した「テヘラン邦人救出劇」を描いた真実に基づく壮大なヒューマンドラマです。
主演は、内野聖陽、共演に、忽那汐里、ケナン・エジェ、夏川結衣ほかです。忽那汐里とケナン・エジェは、ふたつの時代を繋ぐ存在として、それぞれの時代で別のキャラクターを演じています。日本とトルコの合作映画になります。
トルコは、大の親日国として知られていますが、それは何故なのか?きっかけは何だったのか?そのきっかけが、この映画で描かれている軍艦「エルトゥールル号」の海難事故です。1890年9月、帰国途中だったオスマン帝国の親善訪日使節団が日本の串本で台風に遭遇します。船員600名以上が荒海に投げ出され、船は沈没し、500名以上の死傷者を出しました。船の爆発音を聞いた串本の人々は、嵐の中の海に飛び込み、漂流している乗組員を救出し、村人総出で献身的な介護にあたります。自分だけが生き残ってしまったと罪悪感にさいなまれるトルコ人を村人たちは温かく見守り、トルコ人と村人の間には、国境を越えた固い絆が芽生えていきます。
そして、時は流れ、1985年3月。突如イラクのサダム・フセイン大統領が48時間後にイラン上空を飛行する全ての飛行機を無差別に攻撃すると宣言します。世界各国が自国民を助ける為に、救援機を飛ばす中、日本は救援機を飛ばせず、200名近い日本人がイラクに取り残されてしまいます。駐在していたイラン日本大使ほか二人の日本人は、トルコに救援要請をし、トルコ政府はそれに応え、まだトルコ人も多くイラクに取り残されている中、日本人を優先に救出活動にあたります。1890年に串本の村人たちが示した日本の「おもてなし」と「思いやりの心」が、国を、時代を超えて、届いた瞬間でした。
その後も、日本とトルコの交流は続き、トルコの震災の際は、日本が助け、日本の東日本大震災の際は、トルコからの救助隊が救助にあたってくれました。
そのきっかけとなった出来事を描いたこの作品を、当事者である我々日本人は、一度は観るべき作品です。

タイトル:「海難1890」
2015年12月5日(土)丸の内TOEIほかにて全国ロードショー
配給:東映
公式サイト:http://www.ertugrul-movie.com/

1945年8月15日、終戦を伝える玉音放送が流されるまでの二次大戦の裏側を描いた映画「日本のいちばん長い日」

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毎年夏になると、様々な形の戦争映画が公開されますが、2015年の終戦70年目の節目を迎えるこの年を代表する戦争映画は、映画「日本のいちばん長い日」でした。主演は、役所広司、共演に堤真一、松坂桃李、本木雅弘ほかです。監督は、テンポが良く、観客を物語にぐいぐい引き込むことで定評のある原田眞人監督です。1945年8月15日に日本が、ポツダム宣言を受け入れ、無条件降伏をした裏側で、「クーデター計画」が進行していたことを知っている方はどれくらいいるでしょうか?私は、恥ずかしながら、全く知りませんでした。若い陸軍将校たちが、玉音放送を阻止するべく、宮城に襲撃をかけた「宮城事件」のことを。何故、彼らは、クーデターを計画したのか?そして、天皇の思いと声を録音した玉音盤は、いかにして守られたのか?天皇、首相、大臣、そして青年将校たちは、「日本の歴史上最大の決断」の裏で、何を思い、どう動いたのか?が、テンポ良く、エモーショナルに描かれた歴史大作です。主役の阿南陸軍大臣を演じた役所さんや、首相を演じた山崎努さんの安定感と深みのある演技が素晴らしいのは、勿論なのですが、特に、本木雅弘さんが演じた謙虚で透き通った、清らかな昭和天皇が、また素晴らしいのです。本木さんは、「天空の蜂」とこの作品の2部門で、優秀助演男優賞にノミネートされていますが、彼が、本命との呼び声も高いです。本作は、1967年に岡本喜八監督でも1度映画化されていて、どちらの作品も素晴らしい出来ですので、比べてみるのも、良いかもしれませんね。

タイトル:「日本のいちばん長い日」
2015年8月8日(土)新宿ピカデリーほかにて全国ロードショー
配給:アスミック・エース=松竹
公式サイト:http://nihon-ichi.jp/

山田洋二監督が描く、名画「父と暮せば」のアンサームービー、映画「母と暮せば」

映画チラシ 「母と暮せば」 吉永小百合

山田洋二監督が描く、故・井上ひさし原作、黒木和雄監督の映画「父と暮せば」のアンサームービー映画「母と暮せば」です。主演は、吉永小百合、二宮和也、共演に黒木華、浅野忠信です。「母と暮せば」は、故・井上ひさしさんが、「父と暮せば」と対になる作品として、長崎を舞台にした作品を作りたいと思っていたことを知った山田監督が、タイトルだけ遺されていたところから、長崎の原爆資料を読み込み、当時の長崎を知る方たちにお話を伺いながら、映像化しました。山田監督は、「井上ひさしさんと一緒に書くつもりで」脚本を完成させました。ストーリーは、長崎の医大で、授業中に原爆に遭い亡くなった息子が、その3年後に、母親の元にひょっこり現れるというものです。長回しでじっくり撮られたシーンも多く、今回は、山田監督にしては、珍しく、VFXも多用されています。普段の作品では、余りVFXなどは、使いたがらない山田監督ですから、この作品に懸ける並々ならない思いが伝わってきます。「父と暮せば」に出演していた浅野忠信を起用したことも、「父と暮せば」のファンとしては、時代を超えて描かれたようで、嬉しく思いました。また、去年、映画「ちいさいおうち」で第38回日本アカデミー賞の最優秀主演女優賞を受賞した黒木華の演技が、今回も素晴らしいです。彼女は、第39回日本アカデミー賞の優秀助演女優賞にノミネートされていて、最優秀を獲得すれば、2冠達成となります。母と息子の家族の姿から原爆と戦争を描いた様々な人々の思いが込められた作品です。是非、ご覧ください。

タイトル:「母と暮せば」
2015年12月12日(土)新宿ピカデリーほかにて全国ロードショー
配給;松竹
公式サイト:http://hahatokuraseba.jp/
日本アカデミー界もノックアウト出来るか!?安藤サクラの快進撃、映画「百円の恋」
百円の恋 [DVD]

2012年に新設された脚本賞、第一回松田優作賞のグランプリ作品である「百円の恋」を、映画「イン・ザ・ヒーロ—」などの監督・武正晴が映画化したのが、映画「百円の恋」です。本作は、このように映像化前から注目されていて、公開されるや否や、口コミでじわじわとロングヒットを飛ばし、「東京国際映画祭日本映画スプラッシュ部門作品賞」「第24回日本映画プロフェッショナル大賞作品賞およびベスト・テン1位」「第57回ブルーリボン賞主演女優賞」など様々な賞を受賞し、第88回米国アカデミー賞外国語映画賞部門の日本代表作品としても選出されました。今回の、第39回日本アカデミー賞の優秀作品賞部門の中では、世界の是枝監督作品や、戦争映画大作の中で、唯一、ミニシアター系作品としての選出ですが、今最も勢いのある作品です。主演は、安藤サクラ、共演に新井浩文ほかです。ストーリーは、百円ショップで深夜労働する32歳の一子は自堕落な生活を送っていましたが、帰り道にあるボクシングジムで練習するボクサーの狩野に一目惚れをし、その狩野が百円ショップの客としてやってきたことをきっかけに二人の距離は縮まり始めるが、その恋も長く続かず、一子は衝動的にボクシングを始めるが・・・というお話です。コメディータッチにテンポ良く進むスポ根映画で、笑っていた筈が、最後は、一子頑張れ!!と熱い気持ちになる作品です。安藤サクラさん演じる一子のダメ女っぷりと感情を押し殺してひたすらボクシングに向かう姿が、最高でカッコイイのです。安藤サクラさんは、優秀主演女優賞にもノミネートされていますが、この勢いで、最優秀もあるのではないかと思います。彼女の全身全霊の演技を是非ご覧ください。

タイトル:「百円の恋」
2014年12月20日(土)テアトル新宿ほかにて全国ロードショー
配給:SPOTTED PRODUCTIONS
公式サイト:http://100yen-koi.jp/

 

いかがでしたか?
漫画原作もの、大型戦争映画、ミニシアター系作品と、今年のアカデミー賞作品賞は、幅広いジャンルから選出されています。
映画業界全体も、昨年は、日本橋と新宿に新たな大型映画館がオープンし、映画「妖怪ウォッチ」や「スター・ウォーズ」が大ヒットするなど、年々盛り上がりが増していっている気がします。
そんな中で、洋画だけでなく、日本映画にも、これだけ素晴らしい作品があると知ることの出来る場が、日本アカデミー賞だと思います。
是非、3月4日の授賞式前に、受賞作品を観て、一緒に授賞式を楽しんでくださいね。

(文 / Yuri.O)